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(4)(1)及び(2)で規定する原則は、甲板部職員及び機関部職員の双方の能力が維持されることを確保しなければならない。
上記のうち、特に(3)項の「乗組員の数を減らさない」や「甲・機の複合業務を割当てない」という柔軟性を欠いた条件が付けられたことは、この制度を選択するメリットを失わせかねない懸念がある。
我が国における船員制度近代化は、これまでSTCW条約本文の第9条「同等と認められる教育及び訓練の制度」に基づく同等規定によって進められてきており、現在までのところ直接的な影響は考えられないが、将来的には混乗船が主流となる中で、この選択的資格証明制度の見直しが行われるとすれば、国際的な資格制度のあり方として、その整合を図ることを視野に入れておく必要があると思われる。
なお、この選択的資格証明制度が採択される過程で、この制度が余りにも中途半端であるとして、アメリカ及びオランダが採択に反対の意向を示したのに対し、すでに1967年からPOLYVARENT OFFICERS SYSTEM(多機能士官制度)を導入しているフランスは、修正するにせよ何らかの形で残すよう強く主張し、ドイツ、EU(欧州連合)、エジプト、韓国、ノルウェー、ロシア、イギリス、ギリシャ等の国が支持しており、反対に削除を支持したのは、提案国であるアメリカ/オランダのほか、カナダ、アルゼンチン、インドネシア、スウェーデン、チリ、デンマーク等である。
いずれにしても、FUNCTIONAL APPROACHは選択的資格証明制度の採択によってようやく作業が始まったということになる。これからの動向を注視し、将来の国際化と技術革新の進展にふさわしい資格制度を構築するために、さらに検討していくことが必要である。
第三に、第?X章、第?Y章の「安全訓練」に対する規定が強化されたことである。「特定の種類の船舶に乗組む者に対する特別な訓練要件」は、従来はタンカーの乗組員に対する規定のみであったが、今回の改正でRO−RO客船の乗組員に対する規定が追加され、さらに、RO−RO客船以外の一般の客船の乗組員についても要件を追加する手続きが進行中である。「職業上の安全に対する機能」については、現在の「救命艇/救助艇に関する技能」に加えて「高速救助艇に関する技能」、消火技術の組織、戦術及び指揮に関する「上級消火訓練」並びに「応急手当」と医療担当者に指名された者の「医療訓練」についての規定が、新たに設けられた。
第四に、当直要員の疲労の防止に関する規定が導入されたことである。当初は労働時間の規制についての提案が出されたが、STCW条約に労働時間を含めるのはおかしいということで反対する国も多く、結局、当直要員の休息時間に関する規定だけが?[/1規則「任務への適合」として導入された。その概要は、当直要員には24時間に少なくとも10時間の休息を与えること、休息時間は2回を超えて分割されてはならず、その中の一回は少なくとも6時間以上であること、これらの休息時間の要件は緊急時、操練

 

 

 

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